テーマⅠ:患者から薬剤師に期待すること
病院薬剤師が患者に “姿”が見え始めている一方で、薬局薬剤師に対しては、患者はあまり存在意義を見出せていません。患者の薬への関心は高いのに、保険薬局を十分活用できていないのが現状です。それは、薬局薬剤師がどんな専門性を持ち、何を期待できるのか、役割と存在意義が理解できていないからです。それらを打開するためには、調剤だけでなく、薬の情報提供や薬剤服用歴管理、疑義照会、残薬整理――このような薬剤師の基本となる役割について、まず患者に伝えることが不可欠です。つまり、患者に薬剤師の役割や実施している作業内容の“見える化”です。現在、健康サポート薬局やかかりつけ薬剤師指導料、「患者のための薬局ビジョン」アクションプランも発表されるなど、薬局改革の必要性が叫ばれています。薬剤師の臨機応変なコミュニケーション能力の向上をはかりつつ、かかりつけ薬局としての頼れる存在へと薬剤師界一丸となって取り組んでいただきたいと思います。
テーマⅡ:これからの薬剤師の責務と役割
患者本位のファーマシューティカルケアの実践に向けて
この研修の目的は、ファーマシューティカルケアを実践できる優れた資質と能力を有した薬剤師を育成することです。そして、社会や患者のために貢献する使命感をもち、薬剤師としての責務を果たして欲しいと思います。
しかし、昨年の「日本の医療に関する世論調査」において、消費者に医療従事者に対する満足度を聞いたところ、医師は7割以上、看護師は5割以上に対し薬剤師は4割未満という結果でした。多剤併用など薬の安全性に関する薬剤師の果たす役割は大きいにもかかわらず、その関与はまだ十分とは言えません。
一方、米国での信頼できる職業の調査では、薬剤師は医師を抜いて上位を保っています。その理由の一つとして、医師側でもなく保険会社側でもなく患者側に立った薬剤師の姿勢が評価されているとの見方があります。情報を収取・評価・判断する能力の向上はもちろんのこと、患者さんとのコミュニケーションを通して、患者さんの考えや気持ちを理解した上で、ベストプラクティスに向けて責務を果たし、薬剤師への期待に応えていただきたいと思います。