例えば、高齢者は高血圧から膝痛、白内障、不眠に至るまで複数の症候を示し、それに対して医師は症候別に薬剤を処方する。すなわち、「高齢者の病気を治して元気にする」という「総括的な1つのゴールを目指す」のではなく、複数の症候別あるいは疾患別のゴールにそれぞれの薬剤を処方する。すなわち、それぞれの症候や疾患に複数の薬剤を処方するため10剤、20剤と服用する薬剤数が増える。これが多剤処方(ポリファーマシー)の最大の理由である。従って、現状では「医師はポリファーマシーを改善できない」のである。
本講では、薬剤師によるポリファーマシーの改善方法、すなわち「処方の再設計」について解説する。この役割こそが、超高齢社会における薬剤師の新しい本質的な機能になる。自験例や厚労省の対策に言及し、有意義なディスカッションをしたい。